第9章 さよなら五条先生
「いいからさっさと返してね。いい加減キレるよ。千愛といっしょにジャンプ読んで寝る時間なんだから」
「寝る? 一緒……」
「そ。僕と千愛いっしょに暮らしてんの」
ギリっと歯ぎしりする音が聞こえた。それから気味の悪いひきつけ笑いが夜の街に響き渡る。
「返すのやーだねって言ったら? この女の体にハマった? そっかそっかー。千愛はすっげー男遊び激しいから経験豊富だもんなー」
「や……めて」
まだ朦朧として呂律が回らないけど必死に田丸の言葉を止めようとした。でも……追いつかない。
「千愛はヤリマンだぜ。中学のときも俺以外にふたまたかけてさー、何人もと楽しんでんの」
そんな記憶は全くないけど、私の過去を知ってる男がそうだっていうならそれが私なんだろう。
そんな自分が恥ずかしくて居ても立ってもいられない。五条先生にそんな話だけは聞かせたくなかった。