第9章 さよなら五条先生
「イテイテテテテ、てめっ 離せおら、離せぇ!」
「ん? 話せって言った? んじゃ言うけどさ、耳垢たまりすぎじゃなーい? 不潔な男はモテないよ」
そう言って耳だけ掴まれた状態で男は前後左右に激しく数回揺さぶられ、ポンっと仲間内の方に放り投げられた。
私の脇を支えていたもう1人の男がそれをキャッチする。
「綺麗に耳掃除してあげて。ちゃーんと僕の言葉が聞こえるように」
「おいっ! 大丈夫か、おい」
どうやらその男は耳が千切れそうになった痛みで失神したようだ。
暗闇の中にぼんやりと声の主の輪郭が浮かび上がる。
――薄茶色のサングラスをかけたドレッドヘアーの長身男性。
「ジョ……」
「千愛、迎えにきたよ」
「なに? 大ウケ。ぎゃーはっは」
再び私を抱えた田丸が突然大きな口を開けて笑い出した。