第9章 さよなら五条先生
必死に抵抗するけど力が入らない。怖い。誰か助けて。涙が溢れて止まらない。
「ごじょ……う、せんせ」
呼んでも無駄なのは分かってるけど、声に出さずにはいられなかった。
すると後ろから誰かの腕が伸びてきて、トントンと私の左隣にいる男の肩を叩く。
「ねぇーその子どこ連れてくの?」
「あ?」
とても聞き覚えのある声だ。幻聴かな。
それは今一番会いたくてどうしようもない人の声だった。
「僕の特別な女の子だからさ、こっち戻してくんない?」
「なぁんだてめぇ外国人か? おいみんな、なんて言ったか聞こえたー、聞こえねーよなぁー」
「あ、そう。耳、悪いんだね。特別にみてあげる」
肩を掴まれた男はそのままぐいっと引っ張られ私から引き離された。暗くて見えにくいけど耳を掴まれて引っ張り上げられているようだった。