第9章 さよなら五条先生
五条先生にちゃんと言って来ればよかった。
最近彼は夜になるとスミレさんのお店にちょくちょく出かけるから、気に入った女の子でも出来たのかもってひとりでイライラして、八つ当たりするみたいに「今日はデートなのでご飯はいりません」と言って出て来てしまった。「遅くなるけど邪魔しないで。干渉しないで」とも。
激しく後悔した。帰りたい。五条先生に抱きしめられたい。あったかい腕の中に包まれたい。
千鳥足が絡まりヒールが脱げ、転びかけて足が止まる。
ホテルの裏口から男が2人駆け寄って来て、田丸の顔を見て頷くと、私の肩を支えていた田丸は離れ、代わりにその仲間達が私の両脇を抱えた。
ホテルの方にずるずると連れ込まれていく。
「離して!!」