第9章 さよなら五条先生
もう目の前にホテルの入り口が見える。といっても裏口っぽい。スタッフみたいな男が数人やってきた。きっと田丸の手下だ。
「どうせ俺とヤってもそのうちぜーんぶ忘れるんだから、思い切り好きなプレイしてやる」
「そんなことしたら即警察行って訴えてやる」
「記憶があいまいな千愛の事を誰が信用すんの。バーカ」
悔しくてギュッと唇を噛みしめる。返す言葉がない。
こんな時にすすり泣きしてもなんの抵抗にもならない。体が震えて足取りはおぼつかなくなる一方だ。
この界隈はこんな酔いどれカップルも珍しくないのか誰も私の事を気にしてない。