第9章 さよなら五条先生
「ささっ、帰るよ。帰ったらあったかいココアいれてあげる」
五条先生はそう言って私の手を取り、優しく立たせた。
コートをちゃんと私に着せて冷えた手を温めるように包みこむ。まるでさっきの鴨の夫婦みたいに寄り添って並んで帰る。
どうしよう。どんどん胸が苦しくなる。
告白して撃沈してしまった方がずっと楽だ。でもそれは出来ない。彼との間で恋愛はしないって話になっている。私が好きになったら五条先生を困らせてしまう。
やっぱりこの世界に彼はいつまでもいちゃいけない。私の心がもたない。一緒にいればいただけ辛くなる。
次あの赤いレーザーがクローゼットから見えたら、ちゃんと五条先生に教えて、二次元の世界に帰ってもらおう。そう心に誓った。