第9章 さよなら五条先生
30分ほど経っただろうか。
泣き疲れてぼうっと川に映る水面の夕陽を眺めていると、後ろから大きな影が覆ってきてふわりと暖かいものが肩に掛けられた。私のコートだった。
「やっと見つけたよ。心配するじゃない」
聞き慣れた低いトーンの声が耳に入ってきて、彼が迎えに来たのだとわかった。
ゆっくり振り返るとそこにいたのはやっぱり五条先生で、茜色の空に溶け込むように彼が立っている。
「コート取りに戻って追いかけたんだけど見失っちゃってさ。探し回ったよ」
「心配しなくても夜には帰るよ。あそこしか帰るとこないんだし」
「風邪ひいちゃうよ。僕と帰らない?」
「……」
「隣座るね」