第9章 さよなら五条先生
「あ、神坂ちゃん。ちょっとジョー借りちゃった。ごめんね、足やられちゃってさ」
「……嘘。嘘だ。その恰好、おかしいでしょ」
五条先生はスミレさんから手を離して、いつもと同じような佇まいでこちらに向かって歩いてくる。
「千愛、なんか勘違いしてない?」
「勘違い? 二人っきりでくっついてたのに誤魔化さなくていいよ。ボブには秘密にしておいて。かわいそうすぎる。じゃ」
私は飛び出た。
込み上げてくる気持ちが変だ。こんなことで動揺するのは間違っているのになぜか涙が溢れて止まらない。
部屋には戻りたくなくてそのまま外に出た。サンダルの踵がカランコロンとアスファルトを鳴らす。
「千愛待って、僕の話ちゃんと聞いて」