The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
言葉を投げかけてくる三ツ谷に、八戒は身体を震わせていた。
冷や汗のようなものを流しながら、目はウロウロと彷徨わせている。
(八戒……?)
何か様子がおかしい。
和泉は八戒の様子を見ながら眉を寄せる。
「タカちゃん……違うんだ……」
「やれるな!?八戒!!」
名前を呼ばれ、八戒は身体を跳ねさせた。
その時、武道の叫び声が礼拝堂に響く。
「あぁあぁ!!」
「た、武道……?」
「弱音吐いてすいません!自分が情けないっス!!」
鼓舞するように自身の頬を叩く武道。
先程の絶望した瞳ではなく、やり気に満ちている瞳に三ツ谷な小さく笑った。
「無理もねぇって。この状況だ」
「いくぞタケミチ」
「おう!無理すんなよ、千冬。ボロボロなんだから」
「オレはあのアザの方とやる。タケミっちはあの黒髪だ。あの黒髪は大寿の情報をオレらに売った奴だ。おそらく大寿が劣勢になれば身ぃ引くタイプだ」
「ああ。オレもそう思う」
ゆっくりと武道と千冬は歩き出す。
その背中を見た和泉は、武道の背中が逞しく見えた。
(あの頃みたい……)
親族達に食ってかかり、自分を守ろうとしてくれた時の背中と同じだ。
和泉はその背中を見てから千冬の背中へと視線を移す。
背丈や体格は全然違うのに、千冬の背中はなんだか場地を思い出した。
「三ツ谷君たちが大寿をヤるまでの辛抱だ。やれるな!?」
「ああ!!」
「「いくぞ!!」」
武道と千冬はそれぞれ、青宗と九井に殴り掛かる。
「おらあぁ!!」
「うおぉお!!!」
三ツ谷と八戒の為、足止めをしようとする2人を見て三ツ谷は細く微笑む。
「久しぶりだな。二人で組むのは!」
緊張した面持ちの八戒に三ツ谷は声をかける。
三ツ谷は余裕げのある表情を浮かべてはいるが、殴られたせいか足元が未だにおぼつかない。
「ん?八戒?まさかテメェ、俺に逆らう気か!?」
大寿は実弟である八戒に圧をかける。
その圧に八戒は荒い息を吐き出しながら、身体をわずかに震わせていた。
恐れ、緊張、恐怖ーー。
八戒を見れば、大寿を恐れているのが分かる。
そんな八戒を三ツ谷は軽く叩いた。
「八戒!大丈夫だ。オマエは大寿より強えぇ!!」