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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第3章 8・3抗争


コツン…と音がしたのと同時に、三ツ谷先輩の額が俺の額に触れていた。
その距離は本当に鼻と鼻が触れてしまいそうだ。


「…熱はないか。傷のせいで熱が出る時があるから」

「な、ないです…具合、悪くないので…」

「そっか。じゃあ、安心した」


そう言って離れると思ったのに、三ツ谷先輩は全然離れていかないしそれどころかジーと俺を見つめてくる。
見つめられ過ぎて心臓が早く動いているのが分かるのと、顔が熱い。

これ顔赤くなってないだろうか。
心臓の音、三ツ谷先輩に聞かれてないだろうかと心配しながらもやっと口を開いた。


「あ、あの…三ツ谷先輩っ…?」

「和泉、お前逆に体温低すぎるな…。額めっちゃ冷たい」

「そう…ですか?」

「ん、この時期だとずっと触れたくなる」

「で、でもこの距離は…近すぎるんじゃ…」

「そう?」


三ツ谷先輩はジーと見てくる。
彼のシルバーパープルの瞳には、目を見開きながら間抜けな顔をしている自分が映っていた。
だがそろそろ離れてくれないと本当に困る…そう思っていると足音が聞こえてきて…。


「タカちゃーん!お腹空いた!」

「……ちっ」

「え、舌打ち…??」


八戒の呼ぶ声に三ツ谷先輩は舌打ちをしてから、やっと離れてくれたかと思えば少し残念そうな顔をしていた。
そして苦笑を浮かべると頭を撫でてくる。


「和泉は腹減ってない?」

「あ、俺は大丈夫です…。あとそろそろ帰ります…雨もやんでるみたいですし」

「そっか。送ってやりたいのはやまやまだけど…八戒がうるせぇから玄関の所までだけで許してくれな」

「いえ…ありがとうございます」


やっと離れてくれた事にホッとしながら、歩いていく三ツ谷先輩の背中を見送ってから自分の頬に触れる。
頬はやっぱり熱くて心臓が馬鹿みたいに早く動いていた。

こんなの無理かもしれない。
三ツ谷先輩への気持ちに蓋をすると決めた筈なのに、それが出来なさそうだ。


「……キツい」


そして、まるで意味ありげな行動をしてくる三ツ谷先輩が少し憎ったらしい。
恐らく彼は俺を妹としか見てないから、あんなに距離が近いだろう。


(そうだと思わせてください…三ツ谷先輩)


じゃなきゃ、もしかしてと期待してしまうから。
期待させないで…そう思いながら俺はその場に蹲った。
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