The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
女と判断しなきゃ固まらないのか。
でも声からして女と分かれば固まる可能性もあるんだろうな…と考えるながら八戒を観察するかのように見つめる。
「でも、八戒お前さ。和泉が女の姿でも普通に喋れてたよな。途中カタコトが入ってたけど」
「普通に喋ったり出来ないんですか?」
「固まって無口。目を合わせねぇと喋らないし、声掛けてきた女の子は無視したって怒って帰るのがほとんど。コイツ顔は良いから声掛けられがちなんだよ」
「へぇ」
「ん〜和泉ってちょっと柚葉に似てる。口調とか雰囲気とか…」
「確かに柚葉に似てるかもな」
「お姉さんに似てるから喋れるのか…ふーん」
八戒のお姉さんはどんな人なんだろうか?
そして三ツ谷先輩って、八戒のお姉さんを呼び捨てで呼んでいるようだ。
エマの事は呼び捨てじゃないのに…そう考えていれば、胸がモヤモヤとしてくる。
このモヤモヤなんだろうか。
今まであんまり感じた事の無いような感覚に、自然と眉間に皺が寄る。
「和泉、服も乾いてるから。和泉?」
「えっ…?」
「服、乾いてる」
「あ……あ、ありがとうございます」
ボーとし過ぎて話しかけられている事に気付かず、慌てて乾燥機がある脱衣場へと向かう。
そして三ツ谷先輩が下着を買ってきてくれた時のコンビニのビニール袋に、服と下着を突っ込んでいく。
「和泉、大丈夫か?」
「うわっ!?」
「うおっ…。悪ぃ、驚かせたみてぇだな」
「いや…だ、大丈夫です。すみません…」
さっきのモヤモヤのせいで反応が変になっているようだ。
そしてやっとあのモヤモヤの正体が分かってしまい、三ツ谷先輩の顔が上手く見れずにそっぽを向いた状態。
すると三ツ谷先輩は俺の頭を掴むと自分の顔の方向へと向け、俺は思わず『うわっ!』と声が出た。
そして正面を向けば目と鼻の先に三ツ谷先輩の顔。
「みっ、みつや…せんぱいっ…?」
「なんでそっぽ向くんだ?オレ、なんかした?」
「ち、ちがいますっ…」
たださっきのモヤモヤはヤキモチだって気付いて、顔を見れなくなってしまっただけ。
三ツ谷先輩への気持ちは蓋をすると決めたばかりなのに、決めたばかりなのにこんな気持ちになって居た堪れないのだ。
「……じゃあ、熱ある?」
「え……」