The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
ポンポン…と三ツ谷は自分の前に座るよう促し、和泉はジャージの上着をずらして肩だけをはだけさせるようにすれば濡れているガーゼが貼られていた。
「剥がすな、コレ」
「はい」
ガーゼを剥がせば、赤黒い血がまだじわりと溢れている深めの傷が現れた。
かなり傷は深そうで痛そうで三ツ谷は眉間に皺を寄せながら、消毒液でコットンを濡らす。
染みそうだな…痛そうだな。
そう思いながら『消毒液つくぞ』と言い、コットンで傷口を優しくトントンと叩く。
「っ……」
「悪ぃ、痛いよな…」
「いや…大丈夫です……」
コットンは直ぐに赤黒く染まる。
だがいくら消毒液で染みているコットンで傷周りを拭っても血は溢れるばかり。
「女の子が、あんま傷作んなよ…。コレ、多分残るだろ」
「……っふふ」
「何笑ってんだ?」
真剣に言っているのに、和泉は何故か可笑しそうに笑っていて流石の三ツ谷もムッとして眉間に皺を寄せながら不機嫌そうな声をした。
だがそれでも和泉は肩を震わせて笑っている。
初めて見るような笑い方に、なんで笑っているのだろうかと思いながら三ツ谷は新しいガーゼを用意していた。
そして笑いが落ち着いたのか和泉は顔だけを振り向かせた。
「すみません…ちょっと、三ツ谷先輩の言い方が兄のように慕ってる従兄弟に似てて…」
「兄…」
「三ツ谷先輩って、ほんと皆のお兄さんって感じですよね。面倒見が良いし…」
「ふーん……」
声のトーンが変わった事に、和泉はアレ?と思いながら身体ごと振り返ると三ツ谷は少し不機嫌そうな表情を浮かべている。
どうしたのだろうかと思い、声をかけようとする前に三ツ谷の両手が和泉の両腕を掴んでいた。
『え…』と思った時には、三ツ谷の顔が和泉の鎖骨に近付いていた。
髪の毛が地肌に触れて擽ったいと思っていれば、三ツ谷の唇が鎖骨に触れる。
「み、三ツ谷先輩……っ!?」
「んっ…」
ちゅ…という小さなリップ音がやけに大きく響いた。
リップ音と共に和泉は小さな痛みを感じたような気がした瞬間、三ツ谷の顔が離れている。
「これでも、オレの事兄って思える?」
「…えっ」
三ツ谷の目元がほんのりと赤く染まっている。
そして真剣な表情に和泉は固まった。