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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第3章 8・3抗争


ー三人称ー

武道は、姿が見えなくなったマイキーを探していた。
東京卍會メンバーが集まってる中で、総長である彼だけが姿が見えない。
何処にいるのかと病院内の敷地を探し回る。


「おっかしいなぁ。どこ行ったんだろ?」


キョロキョロと視線を動かしながら、渡り廊下を走りながら探す。
もしやドラケンの病室にいるのか…それとも入れ違いになったのだろうか。


「ん?あっ」


武道の目線の先には、外の壁に寄りかかるように立っているマイキーの姿があった。
やっと見つけた事にホッとしながら『マイキーくん』と声をかけようとした瞬間言葉を詰まらせる。

何時もの様子が違う。
顔は俯き、だんだんと力が抜け落ちるようにマイキーはその場に座り込んだ。


「……よかったっ。ケンチン」


泣いていた。
マイキーの双眸からはボロボロと大粒の涙が零れ落ちており、体は震えている。
それは武道にとって初めて見る姿だった。


(気丈に振舞ってたんだ。みんなを励ます為に…そうだよな。1番辛かったのは、マイキー君だ)


誰よりもドラケンを大切に想っていたのはマイキーだ。
長い間相棒として過ごしてきた彼が生きている事、それが何よりも嬉しかった筈。


「心配かけさせやがって」

「佐野先輩…?」


壁に隠れて去ろうとした武道は、聞こえてきた声に驚いて顔を覗かせた。
そこには目を見開かせている和泉の姿があり、マイキーはゆっくりと顔をあげて彼女を見上げる。


「イズミっち…」

「だ、大丈夫ですか……」


初めて見たマイキーの泣き顔に和泉は戸惑い、どうしようかと慌てていた。
なんて言えば良いのだろうかと思っていれば、伸ばしていた手を捕まえる。
そしてマイキーは手を引っ張ると和泉を抱き寄せた。


「さ、の…せんぱいっ…?」


抱き寄せられてから、強く力を込められて抱き締められる。
濡れた服からはマイキーの体温が色濃く感じるのと同時に、心臓の音が聞こえてきた。

そして肩に生ぬるい何かが滲むのが分かった和泉は強ばらせていた体の力を抜いてから、ぎごちなくマイキーの背中に手を伸ばすとゆっくりと摩った。


「ごめん、イズミっち…。暫く、ちょっとの間だけで良いからこうさせて……。少しだけでいいから…」

「……いいですよ」

「ありがとう……」
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