第3章 黄色天国
「おい、桃城」
いつもと同じ仏頂面……ではあるが、どこか怪訝そうに眉をしかめる海堂に、桃城は少し肩をすくめた。
「なんだぁ?」
「テメェ、栗原に何言いやがった」
「栗原? んな特別なこと言ってねぇぜ。……あ!! もしやアイツがなんか言ってたのか?」
千紘は自身に対して好意的な様子があったのだろうか。淡い期待と好奇心が桃城を駆り立てる。海堂は小さく舌打ちをして、吐き捨てるように言う。
「友達ができた、だと」
「んだよ〜ッ、かわいいヤツだなあ!!」
鼻唄まじりでゴキゲンなステップを踏みながら、桃城は壁打ち練習し始めた。聞きたいことが聞けずに終わった海堂は、不完全燃焼を振り切るかのように素振りするのであった。