第3章 黄色天国
一方、桃城はどうしても気になることがあった。
(アイツ、さっき俺のこと桃城って呼んだ……よな?)
作戦会議の名目で昼を共にするはずだったが、結果としては4人の友情をやや深めるに留まった。生徒会に前向きではないから、栗原にとってはこれで良かったのではと、桃城は思った。
というよりも、目下気にするところではないのだ。
(何でだ? 嫌味ったらしい顔して桃城くんって言ってただろ。クッソー、ああいうタイプは顔色が読めねぇからニガテなんだよなぁ)
栗原が何を思ってくん付けをやめたのか知らないが、そのことにやけに桃城の心にさざ波を立てていたのだ。もしかすると栗原にとって、何か意味のあることではないのかもしれないが……。
そう思い至った時、桃城は考えても無駄だと悟る。へんに考えるよりかは友達が増えた、そう思った方が面白いじゃないかと、気持ちは前へ前へと向いていく。
「桃城くん。元気なのは大変結構ですが、今はお弁当を食べる時間じゃありませんよ」
「いいじゃないっスか~!! センセー!!」
「桃……」
退屈な社会の授業中、地図帳がわりに広げた弁当には前向きな言葉は飛んでこなかったようだが……。弁当を食べたそばから、食べた分だけ先生にこってりと絞られるのだった。