第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「ほんと美味しそうに食べるよね」
「だって美味いもん」
「ほっぺにご飯粒ついてる」
「ん?ああ、さんきゅ。いちかちゃんもしっかり食っとけよ」
「うん。…いただきます」
これだけ光太郎さんくらい食べてたら元気にもなるよね。見てるだけでも元気になるもん。誰かと食べる食事が美味しいのは相手の幸せそうな顔に自分も幸せになれるからなんだろうね。そんな大切なことをすっかり忘れちゃってた気がする。
「でもさー、せっかくなのに雨だなぁ」
卵焼きをもぐもぐと頬張りながら呟く。テレビで流れている天気予報は一日中雨と曇りだとそう伝えている。
「雨の日も光太郎さんは仕事?」
「仕事っていうか今日は配達みたいなもん」
「配達の仕事もしてるの?」
「こっから少し離れたところに一人暮らしのばーさんがいるんだよ。この辺の若い連中でたまに様子見たりご飯届けたりしてんだけど今日は俺の番だから」
「そうなんだ。やっぱり過疎化も進んでるんだ」
「そう。昔はもっと人も多かったけどみんな出て行ったから。島って漁業以外には仕事ってねぇもんな。ばーさんとこの息子もみんな東京だし」
「だったらそのおばあちゃんも大変だね…」
「昔から世話になってた人だから放っておけないから。…あ、そうだ。いちかちゃんも今日することないならドライブがてら一緒に行く?」
「……え、いいの?」
「俺は全然いいよ。ばーさんも若い女の子が来たら喜ぶと思うし」
「でもなんにも手伝えないかもしれれないよ?」
「いいって。配達してばーさんの話し相手になるのが仕事みたいなもんだから」
「そうなんだ。それなら一緒についてく。なにかできることがあったら言ってね」
「おう。んじゃこれ食ったら出かけようぜ。おかん、おかわりな!」
キラキラした笑顔で美味しそうに食べてるのはいいとして…、今食べてるのって確か二杯目だったよね…。恐るべき食欲…。