第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
二人でじゃれ合いながら坂を下ってそして足を止めたのは青い屋根のお店。
「はい、着いた」
「ここ赤葦さんのお店じゃないですか」
「だって俺、常連だもん」
「朝食食べに行くんじゃなかったの?」
「食うよ。二日酔いには丁度いい食いもんだし。さ、入ろうぜ」
頭に疑問符が浮かびながらも光太郎さんの後をついていくと、赤葦さんが出迎えてくれる。
「おはようございます。…昨日は大丈夫でしたか?」
「おはようございます。赤葦さん、あの……昨日はご迷惑じゃなかったですか?」
「京治でいいですよ」
「あ、はい…。じゃあ京治さんで…。恥ずかしながら記憶が曖昧で」
「大丈夫ですよ。俺はお酒を売っただけですから何も…」
「そうですか…。光太郎さんには迷惑かけちゃってもしかしたら京治さんにも…と思ってたので」
「気にしないでください。木兎さんも気にしない性格だし全く問題ないですよ。それより二日酔いは大丈夫ですか?」
「はい、お陰様でなんとか…。朝もゆっくり寝てきたので」
そう言葉にした途端、朝の光景を思い出してしまう。
光太郎さんの腕に抱かれていた時の互いの体温、シーツの感触、裸で抱き合っていた訳でもないのにこんなにもリアルに蘇ってくる。