第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「元彼の話もしてたよね、そこはなんとなく覚えてるんだ…」
「ん?ああ…、全部聞いたよ」
「そっか…。本当にごめんね?思いっきりプライベートな事話しちゃって。……しかも全然いい話でもないし」
「俺は気にしてないよ。少しはすっきりした?」
「それがね……。正直、あんまり覚えてないの」
「だったらそれでいいじゃん。あんまいい思い出でもなさそうだったし、もう思い出さなくていいじゃん」
「そうだね。…光太郎さんの言う通りかも」
「嫌な思い出のひとつやふたつ誰にでもあるから」
「…うん」
「でもさ、またしんどくなる前に俺にでも言えな?アドバイスはできない!けど話はいつでも聞くしいつでも添い寝してやるから!」
窓から射した日差しを背ににかっと笑った笑顔が印象的だった。私なんて光太郎さんにとっては赤の他人なのにまっすぐな言葉は私を包み込んでくれるかのように優しかった。
「起きて着替えたら朝飯食いに行こうぜ」
「食堂で?」
「食堂でもいいけど二日酔い大丈夫か?」
「正直、食欲はあんまりないかも」
「だったらいいとこがあるから一旦着替えたら食べに行こうぜ?」
「外へ?」
「そう」
「朝ご飯が食べられるところなんてあったんだね」
「そう。俺はそこの常連だから」
「何が食べられるの?」
「それは着いてからのお楽しみ。いちかちゃん、シャワー浴びるだろ?その後準備できたら俺の部屋に来て?」
「うん、わかった」
「んじゃ後でな」
「うん」
目が覚めた時には思いもよらぬ事態にどうなる事かと思ったけど、拍子抜けしちゃうくらいに普通だった。こういうことよくあるのかな、慣れてるのかな…なんんてつい勘ぐっちゃうけど光太郎さんの優しさに救われた気がする。
「光太郎さん!」
「んー?」
「色々とありがとう。次は悪酔いしないから、またお酒付き合ってね」
「ああ、いいよ」
二日酔いで気怠い体。なのに気分はどこか晴れやかであのにかっと笑った顔が頭から離れない。
まだ二日酔いでお酒も残ってるのかな…。ドキドキしてるのだってこの熱いシャワーの所為だよね、きっと。