第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
あれこれと思考を巡らせていると急にスマホのアラームがけたたましい音を奏でる。二日酔いも冷めそうな勢いのアラーム音にもぞもぞと伸びる手。
「ああー…、……朝」
そう言いながら停止ボタンに触れて“おはよ”と頭を撫でる。
「……おはようございます」
布団の中で一人気まずいまま顔をあげることもできなくてそのまま小さく呟く。
「昨日はよく眠れた?」
「………うん」
「なら、よかった」
「…でも、なんで一緒に寝てるの?」
「成り行き?」
「…そっか、…成り行き……」
「……えーと、今は…9時過ぎか」
「え、もうそんなになるの?」
確かによく寝た感じはあるけど…、それにしたって寝すぎだ。
「光太郎さん仕事は?」
「さぁ…おかんがやってくれてんじゃない?」
顔を上げるとケロッとした表情で呑気に構えている。昨日は朝から色々と仕事してたみたいだったのにそんなにいい加減で大丈夫なのかな。
「そんな呑気なこと言って…。しかもこんなところ見られたら誤解されちゃうよ?」
「でも誤解されるような事してねぇよ?…したかったけど」
「したかった…?」
「だってこんな可愛い子と寝てたらそんな気にもなるだろ普通。けど、そんな事したら後であかーしに半殺しにされそうだから我慢して、んでそのまま寝た」
「……何もなかった?」
「ないよー」
呑気に“ふわぁ”と大きなあくびをしながら髪をかきあげる。この様子からじゃ光太郎さんの言うとおり何かあったわけじゃなさそうだけど、こんなお酒の失敗しちゃって情けない。きっと赤葦さんにも迷惑かけちゃったよね……。
「私、昨日の記憶があんまりなくて……、迷惑かけたよね絶対」
「楽しく飲んで話してそれで終わり。あとは先にいちかちゃんが寝たからここまで運んできたの。一人で寝たくないって言うから俺の部屋に連れてきただけ」
「そんなことも言ってたの?だからこんなことになっちゃったんだ……。ほんとにごめんね」
「気にすんなって。俺は久しぶりの女の子の感触にいい思いできたし」
ぎゅうっと抱きしめるような仕草をしてどこか満足気だった。覚えてないとはいえ私のわがままで付き合ってもらったようなものだけど、迷惑そうじゃなかっただけマシなのかな。