第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
適当につまみになるものをタッパーに詰めながら玄関にバイクの音を聞いて、外を出ると原付に跨がった木兎さんがちょうどヘルメットを外していた。
「あかーし、どした?」
「丁度よかったです、ちょっと気になることがあったので」
「何よ、何事?」
「木兎さんとこのお客さん、ほら女の子いたでしょう?さっき酒を買っていったんですけど浜辺で朝まで飲むなんて言い出すからから危ないと思って」
「いちかちゃん?」
「そうです」
「そっか…、女の子一人だしな。そら危ねぇわ」
「悪いんですけど少しついててあげてください」
「そうするわ。んでいちかちゃんは?」
「店の中です。あとこれ酒のつまみにでも…」
「いつも悪いな」
「慣れてますから」
「サンキュ」
そのままタッパーの入った紙袋を受け取り、店内に入っていく。平然を装いながら彼女に声をかけて隣に腰掛ける。
「よう」
「あれ?光太郎さんだ」
「どうしたのいちかちゃん、ご機嫌じゃん」
「光太郎さんこそ、釣り終わったんですか?」
「潮はいいのに今日に限って全然釣れなくてさ。んで帰ってきたの。それでいちかちゃんは何?飲んでたの?」
「ちょっと飲もうと思って…、でも浜辺が気持ちいいからもう少しだけ」
「にしては量多くない?」
「お店はもうすぐ閉まっちゃうし買えないと困るから」
「じゃあ俺と飲もうか。海で飲みたいなら俺が付き合うから」
「それがいいです。俺からもお願いします」
「でも、いいの?」
「別に特にすることないしな」
「じゃあ後は木兎さんにお願いします。もう店閉めるんで」
「すみません、遅くまで」
「いえ、気にしないでください」
「んじゃまた寄るわー」
「お邪魔しました。おやすみなさい」
ぺこっと頭を下げてから木兎さんの後を追うように出て行った。
女の子の一人旅っていうくらいだからそれなりの理由があるんだろうけど、いちかさんも訳あり女子って感じだな…。