第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「こんばんは」
「買い物ですか?」
「散歩がてら。…これください」
我ながら可愛くないと思うけど、世のおじさん御用達の日本酒のカップ酒を一本レジに差し出す。
「日本酒好きなんですか?」
「そうなんです。今日は星が綺麗だしちょっと飲もうかなと思って」
「いいですね。夜だけですけどやっと秋らしくなってきましたから」
「でも昼間は暑かったですよー。光太郎さんに釣りに連れて行ってもらったんですけど暑くて、でも凄く楽しかったです」
「好きですね…、あの人も」
呆れたように笑いながらも手際よく袋詰めをしてくれる。“気をつけてくださいね”と見送られてすぐ近くの砂浜へ歩いて行った。
街灯だけが照らす場所で結局今夜も一人酒。いつもと違うのは砂浜に腰掛けて満点の星空の下虫の声をバックサウンドにしてるところかな。ここは東京じゃないってことだけが唯一の救い。
「ああ、おいしい…」
そんな風にいつもより感じる。良い感じに身体の体温が上がってふわっと身体は軽くなって、波音を聞きながらお酒を飲めるなんて最高の贅沢だ。
アルコールが回ってくると胸につかえていた思いもすーっと消えていくようで随分楽になる。だけど一本なんてすぐになくなっちゃう。お店は確か21時までだったし、もう少し買い足して今日は朝まで飲んじゃおうかな…。