第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
“うん。だからね、卒業したら連れてって?原宿行きたい”
“考えといてやるわ”
“及川先生のことがあったにせよ、あれから何もないんだから”
“けど俺がいない間だけは気をつけとけよ”
“……うん”
“卒業まであと少しなんだから”
“分かってる。ちゃんといい子にしてる”
“すぐ帰ってくるから”
“うん”
“じゃあそろそろ切るぞ”
“ねぇせんせ?”
“なんだよ”
“ちゃんと好き?”
“当たり前だろ?…あんなことがあってもお前への気持ちは変わらねぇよ”
“好きって言って?”
“好きだよ。これで満足か?”
“ありがとう。これで先生がいない間も頑張れる”
電話越でもいちかの嬉しそうにはにかんでいる表情が浮かぶ。前のようにいちかに触れることができなくても変わらない互いの気持ちでこのまま何もなく卒業を迎えられることが俺の今の願いだった。