第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
「…せんせ?」
「ほんとはさ、いつもこうやって抱き締めてあげたかったんだよ、俺も」
「……ほんとに?」
「そう。想像の中ではいつもこうやってた。ああでも…、やっぱりいちかを抱いてると落ち着くんだね。二日間さ、いちかに会えなくて俺も寂しかったから」
私は先生にとって寂しいと感じてくれる程の存在なんだろうか。ずっと岩泉先生のためだと思ってしたきた事だけど、私にはそれ以上の理由があるのは明確だった。
「意外ですね。…先生もそんな風に思ったりするんですか?」
「そりゃあね、俺のいない間に岩ちゃんとまた会ったりしてたのかなってそんな風に思ったりさ」
「先生とは会えないです。また前みたいに誰かに見られたりするとダメだし」
「そっか…。……じゃあいちかも寂しかったよね。…もう少しこうやっていようか」
先生は私の欲しい言葉をくれる。先生の声色がとても優しくて、私は安心するように先生に身体を預けた。私を抱きしめていた先生の手がブレザーの釦にかけた。ひとつひとつ器用に外し思わず顔を上げると先生は口角を上げ笑っている。
「やっ…、先生?あの、どこ触ってるんですか?」
「どこって、いちかの胸」
「これは…、ダメです。約束が違います」
「大丈夫。これから起こることはいちかにとってもいいことだから」
「これから起こることって何をするんですか?」
「秘密…」
「え…?」
「今からさ、高校最後の思い出作ろうよ」
艶のある声で耳朶に息がかかって、ゾクッとする感覚が体を走っていく。
「思い出ってこんな…っ、ゃ、…あ」
「ああ、いいね。その声…」
“今日はさ、少しくらい期待して来たんでしょ?”と囁かれると頬は紅くなって、何も言い返せなくなってしまう。