第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
教室の前で息を整えてからゆっくりと扉を開く。真っ直ぐに見たその先には先生の姿。満足そうに微笑みながら私の前に立ち、扉を閉めて鍵をかける。
「思ったより早かったね」
「だって先生が急に呼んだんじゃ…」
“ないですか”と言う前に先生の指が唇に触れた。
「そんなに俺に会いたかった?」
覗き込む視線も柔らかな表情も私を優しく包んで、今日もまた先生の期待に応えたい自分が顔を覗かせる。
「………会いたかったです」
「そっか。どうして?前まであんなに嫌がってたのに」
「自分でもなぜなのか分かりません。気付かないうちに連絡を待ってる自分がいました」
「へぇそうなんだ。岩ちゃんに対しては何も感じないの」
「それは…。でもこうしなきゃ先生の立場も守れないし」
「最近は嫌々って感じでもないもんね。…気持ちよくなっちゃった?」
「……そうかもしれないです」
「嬉しいな。いちかはほんと素直ないい子になったよね…。じゃあさ、今日は俺も気分がいいしいちかにもご褒美あげるからさ、ソファーのところにおいで?」
言われるがままにいつものソファーへまで移動し腰かけると耳元で囁く。
「そこじゃなくて、ここ」
そう言いながら自分の膝をポンポンっと叩いて手を引いて、私は先生に後ろから抱き締められる形で座らされてしまった。体が密着するだけで先生の甘い香りに思わず鼓動は速くなる。