第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生

「……そうです」

俯き絞り出すような声で呟いた後、甲高い声が降り注ぐ。

「ははっ、生徒の処女奪うなんてほんと最低」

目の前の先生は私の知っている及川先生の姿ではなかった。生徒には優しくて気さくに声をかけてくれて人気者の先生ではない。

「それで？昨日もあのボロアパートで2人はセックスしてたの？」

岩泉先生の熱い視線と愛され尽くした夜だった。そんな記憶も嘘みたい。ただ今は静かに頷いて“助けて”って言葉を飲み込む。

「そんなに怯えないでいいじゃん。惚気てくれてもいいんだよ」
「……そんなの無理、……です」
「なんで？朝の2人は幸せオーラ出まくりだったじゃん」
「やめてください」
「やめてもいいけど、二人のこと保証できないよ？いいの？」
「……っ、ごめんなさい」
「ねぇ…。岩ちゃんのをさ、咥えたりするの？」
「え…？」
「恋人同士だったら当たり前だよね。初めてが岩ちゃんだったんならそういう事も教えてもらったりしたの？」
「…違います」
「へぇ…、そうなんだ。もしかして自分から積極的に？」
「……そんなんじゃないけど」
「でもその様子だとしてるんだよね。……じゃあさ、普段どんな風にやってんのか…、してみてよ、俺に」
「なんで…っ」

一瞬耳を疑った。こんな屈辱的な事、有り得ない。

「俺さ、意地悪すると興奮するタイプでさ。今もそうなんだよね」
「だからって無理に決まってるじゃないですか。なんでそんな事」
「大丈夫。犯したりはしないから。たださ、岩ちゃんと同じようにしてみせてよ。…そのくらい安いもんでしょ」

想像しただけでぎゅっと胸に鋭い痛みが走る。

「柳瀬さんは岩ちゃんの為にどこまでできるかなぁ？…試されてるよ？」

でもここで先生の立場を守れるのは私しかいない。込み上がってくる感情に泣きそうになるけど、ぐっと堪えて小さく答える。