第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
今日も滞りなく1日を終えた。学校では互いの距離も変わらずにほとんど会話をすることもない。気付けば視線を追ってしまっていて他の男と話しようもんなら無意識にイラッとしてる自分に気付いてハッとする。着実に気持ちが大きくなっていた。
及「なぁんかさぁ、最近のいちかちゃんってキラキラしてない?」
岩「そうか?」
及「前から可愛かったけどさ、さらに磨きがかかったような気がする。なんとなく俺にも優しいし」
岩「気のせいだろ?」
及「岩ちゃんってほんと鈍感だよね。女の子の些細な変化に気づいてあげなきゃ女の子にモテないよ」
岩「モテないねぇ…。ま、実際はそうでもないけどな」
及「え?何?それどういう意味?」
岩「別に」
及「岩ちゃん、強がらなくてもいいから。もしいちかちゃんと付き合えたらいちかちゃんの女友達でも紹介してあげてって頼んであげるから」
岩「そりゃどうも…」
及「あ、噂をすればいちかちゃん」
及川の視線の先を辿るといちかを先頭に後から花巻と松川もついてきている。何を話してるのかまでは聞こえないけど真ん中で嬉しそうに笑っている。
及「いちかちゃーん。ね、明後日の部活の帰りさ、いつもより練習早く終わるみたいなんだけどご飯でも食べて帰らない?」
「及川君と?二人?」
及「そう!」
「いや、それはちょっと…」
及「なんで!?」
「だって及川君と二人とか目立つし誰に何言われるか分からへんし」
及「そんなの気にしないでいいし俺ちゃんと守るから…。それに俺の彼女になってくれたらさ、ファンの子にもちゃんと分かってもらうように俺が言うから」
「でも彼女にはならへんよ?」