第68章 ❤︎ 青城3年とルームシェア
数日後、迎えた日曜日。この日は朝から快晴でお出かけ日和。宣言が明けて賑やかさと取り戻した都内の様子が連日流れ、自然とテンションも上がっていく。“俺も行きたい”って最後まで駄々をこねる花巻をなんとか宥めて10人乗りのワゴン車へ乗り込んだ。しばらく使ってなかったせいで独特の埃っぽさの残る車内だったけど、窓を開けるとすっかり秋らしくなった光景と爽やかな風に髪を揺らした。
「まっつんってペーパーじゃないんだ」
「親の車を時々借りて運転してた程度だよ」
「ワゴン車だから買い物も沢山できるね」
「いいの乗ってるな、いちかの両親は」
「前は仕事で使ってたから。私も免許取ったから好きに使ってはいいって言ってくれたけどこんな大きい車はさすがに怖い」
「女の子だしな。そこは無理はしなくていいんじゃない?」
「うん。どうせならもっと可愛い車がいい」
「その方がいいよ。及川は見栄はって外車とか乗ってそうだけど」
「そりゃねぇ、やっぱ憧れるよね。岩ちゃんは軽トラックとか乗ってそうだけど」
「あはは。それ似合いすぎる。しかも黒のボディの」
「頭にハチマキとかして?」
「もちろん冬でもタンクトップだよね」
「待って。強すぎ…、違和感なさすぎだって」
「男前だもんな、岩は」
「ほんとにね、俺にはない男らしさだよ」
「羨ましいって?」
「いや全然。男らしさは岩ちゃん担当でいいや」
「今頃、岩泉くしゃみしてるかもね」
「あり得る。想像したら笑える」
「せっかくだしでっかいお肉買って帰ろうか、お留守番の二人組のためにね」
「いいね、じゃBBQしよう」
「それ絶対楽しいやつじゃん」
「今まで沢山我慢してきたんだからこれくらいは許されるよ」
カーステレオから流れる音楽、高速道路から見える風景、開放的な気分はテンションを最高潮にした。家を出る前に決めていた買い物リストはすでに品数は三倍くらいにまで膨れていたけどこの高揚感を前にそんなのどうだって良い。