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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有


一人になった私は遠回りをしながら比較的大きな駐車場のある最寄り駅へと向かうことにした。

歓迎会の場所も、終わる大体の時間も念のためにと実弥さんに事前に連絡してある。


…えっと…メッセージは20分前に来てるから…もしかしたらもう近くまで来てるかも


車で来てくれる実弥さんと合流しやすい場所と言えばこの近辺ではそこくらいしか思いつかなかった。

私は、スマートフォンの電話マークをタップし、実弥さんに電話を掛けようと画面を操作した。その直後、私の横にフッと人が現れたと思いきや


「どこ行くの?一人は危ないから俺が一緒にいてあげるよ」

「…っ…!?」


歓迎会で私に絡んできた男…役員の親戚だという男が私の顔を覗き込んできた。


なんでこの人ここにいるの?


必要以上に近い気がしてならないその距離感に不快感を覚えながらも”役員の親戚”という言葉が頭をちらつき


「…先ほどお話しした婚約者が迎えに来てくれるというので、連絡するところです。なので着いて来て頂かなくて結構です」


”むしろついてこないでください”という言葉はかろうじて飲み込んだ。

七光男は、全く相手にせずスタスタと歩き続ける私の様子に


「…おかしいなぁ。大抵の女の子は、俺みたいに仕事が出来て容姿も整ってる男とくれば喜んで着いてくるんだけど」


なんてことをのたまいながら、依然として私と歩調を合わせるように隣を歩いている。


なんて自信家な男…あぁ早く実弥さんに会いたい


現実逃避をするように愛する実弥さんの姿を思い浮かべていたが


「若いのに婚約だなんて…君めちゃめちゃ人生損してるねぇ」


その言葉に


「…はい?」


思わず足を止めてしまった。そのまま私よりも頭一つ分ほど大きな男を半ば睨みつけるように見遣ると


「うん!いいよいいよ!やっぱり君すごく可愛い!頭もよさそうだし、男遊びも知らずに結婚するなんてもったいない!」


なにがそんなに楽しいというのか、七光男はニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべていた。


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