第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有
「え?そうなの?」
「はい。私としては今すぐ結婚したいくらいなんですけど、新入社員がすぐに結婚するなんて体裁が悪いからって数年はお預けなんです」
私が苦笑いを浮かべながらそう言うと
「へぇ。随分としっかりとした考えを持ってる相手なのね」
女性は顎に手を当て関心したような表情をしながらそう言った。
「そうなんです。そんなところも好きなんです」
「いいなぁ…私もそんな風に思える彼氏が欲しい」
そんな会話を交わしていると、胸をもやつかせていた嫌な気持ちが浄化されていくようだった。
トイレから戻り自分の席へと視線を戻すと、七光先輩の姿はなかった。いったいどこへ行ったのかと席を見回してみると
…いた
先輩は、別の席で楽しそうに飲んでいた。
…興味が削がれたみたいでよかった
そう思いながらホッとしていた私だが、視線がパチリと合っていしまい、なぜかヒラヒラと手を振られてしまう。そのいかにも慣れているという感じの行動に
…やっぱり嫌いなタイプ
そう思った私は、無視を決め込むことにしたのだった。
それ以降はその人に絡まれることはなく、特段楽しくない新入社員歓迎会という名の飲み会は無事終了を迎えた。
”二次会行く人~!”
と騒いでいる集まりから少し遠ざかり、カバンにしまい込んでいたスマートフォンの画面を確認すると実弥さんからメッセージが届いていた。
慌ててメッセージアプリをタップすると
”飲まなかったから迎えに行ってやる。終わったら連絡よこせ”
と相変わらずぶっきらぼうな内容が表示された。
やった!自分も飲み会だったのに飲まずに迎えに来てくれるなんて…実弥さん優しい!
念のため周りの様子を伺ってみると、2次会に行く人と1次会で帰宅を選ぶ人、半々くらいだった。
これなら別に私も帰ったって浮かないし大丈夫か
そう判断した私は、ゆるむ頬をぐっと抑え、仲良くさせてもらった同期や先輩たちに挨拶を済ませその場を後にしたのだった。