第39章 あなたの声は聴こえてるよ✳︎不死川さん※微裏
私は不死川の左側にお盆を置き、そのお盆が私と不死川の丁度真ん中に来る位置に腰かけた。
不死川は濡らした手拭いで丁寧に手を拭くと、4つ並んだうちのおはぎのひとつをムンズと手で掴み
「…一口で食べたらのどに詰まるでしょ。せめて半分にしなよ」
私の握り拳の半分くらいの大きさのおはぎを一口で食べた。不死川はしっかりとそれを咀嚼した後
「身体が糖分欲してんだァ。仕方ねェだろォ」
そう言って再びおはぎを一口で食べた。私が二つ目のおはぎに手を付ける頃には
「ご馳走さん」
不死川は4つ全てのおはぎを食べ終えており、お茶を啜っていた。
こんな風に不死川とおはぎを食べるのも…もう最後か
そんなことを考えながら2つ目のおはぎの丁度半分辺りを食べていると
「お前ェの作るおはぎはなんか美味ェんだよなァ…無性にお前のが食いたくなる」
不死川がゴロンと縁側に転がりながらそんなことを言い出した。
「…っ…何それ?おかしいんじゃない?もっと他に美味しいおはぎあるでしょ」
私は嬉しさを誤魔化すようにそう言った。
「誰がおかしいだァ?てめェの方こそ、俺じゃねェと満足できねェとかいう助平野郎じゃねェか」
「…馬鹿!それおはぎと関係ないじゃん!やめてよね!」
私は不死川の予想の斜め上を行く発言に、”もうここには来ない”という言葉を告げるタイミングを見つけられずにいた。
更に
「つうかお前ェ、背中怪我したんだってなァ」
ムクリと起き上がった不死川は顔を顰めながらそう言うと、立ち上がり私の背後までさっと移動してきた。
「…なんで知ってるの?」
「なんでだァ?んなもんどうだっていいだろォ」
不死川はそう言いながら私の背後にどしんと座り込むと
「見せてみろォ」
さも当然のことのようにそう言った。言われた私はと言えば
「はぁ!?こんな明るい場所で嫌に決まってるでしょ?別に大した傷じゃないし…放っておけば治るから平気だよ」
まさかそんなことを言われるとは思っておらず、大慌てしてしまう。