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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第39章 あなたの声は聴こえてるよ✳︎不死川さん※微裏


「……私…ただの馬鹿じゃん…」


不死川には、きちんと思いを寄せる女性がいた。

自分が大切に守って来た不死川との仮初の関係が…心のない身体だけを繋ぐ関係が酷く滑稽に見えた。


……もう終わりにしよう


そう決意を固めた私は、今だけと自分に言い聞かせ、目をこすらなくて済むよう顔を真下に向けながら泣いた。



















風柱邸に到着し玄関を開けると不死川の草履がきちんと並べられた状態で置いてあった。


…帰って来てるのか


頭の中で何度も


”好きな人が出来たから、もうここには来ないねぇ~”


にっこりと笑みを浮かべながら不死川にそう告げる練習をした。


…大丈夫。私なら出来る


最後にもう一度自分に言い聞かせ

バスッバスッ

と音がする中庭が見える縁側へと向かった。

















「遅かったじゃねェか」


私が声を掛ける前に私の存在に気が付いた不死川が、巻き藁を斬る手を止めることなく声を掛けてきた。


「うん。ちょっとね。ところでさぁ、話があるんだけど」


ドクドクと波打つ胸を懸命に抑えそう声を掛けると


「こいつが終わったら…なァ!」


不死川は依然として手を止めることなくそう答えた。


「…ん。じゃあ私、おやつでも準備してるから」

「…ッシャァ!とっとと終わらせちまうぜェ!」


…あんな嬉しそうな顔して…本当、甘党なんだから


ニヤリと笑みを浮かべ巻き藁を真っ二つにするその姿は、はたから見れば恐怖の対象でしかないだろう。けれども、私にはそんな不死川のニヒルな笑顔も素敵に映るのだから、私の不死川への気持ちは、自分で思っていた以上に育っていたのだろう。





















お盆にお茶とおはぎを持って台所から戻ると、既に後片付けを終えた不死川が縁側に腰かけていた。


「はやっ…もう片付けたの?」

「ったりめェだろ。折角入れた茶が冷めちまったらおはぎが台無しだろォ」


胡坐をかき腕を組んだ不死川が発したその言葉は、やはり誰がどう見ても格好と発言が合っておらず、自然と口元が緩んでしまう。

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