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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有


もし甘露寺様からご連絡が来ていなければ…千寿郎様にもお会いすることができたかも知れなかったのに


せっかく家の掃除で綺麗にしたはずの心が、再び汚い感情で支配されていきそうになる。


…っ…それはいくらなんでも違う。私ったら…なんて酷いものの考え方をしているんだろう…!


そんなことを考えながらぼんやりとしていると


「義姉上…?どうかなさいましたか?」


千寿郎さんが私の顔を遠慮がちに覗き込んできた。我に帰った私は


「…なんでもありません」


いつもよりも口角が上がるように、無理やり笑みを作り誤魔化すようにそう言った。


「それよりも…折角ここまで足を運んで頂いたのにこのまま帰ってもらうのは…残念です……もし千寿郎様のお時間があるようでしたら、私と2人で甘いものでも食べに出かけませんか?杏寿郎様がいつ帰って来られるかはわからないので、私の分かる範囲で構わなければ最近の杏寿郎様のご様子をお伝えしたいのですが」


私がそう千寿郎さんに提案すると、千寿郎さんは一瞬パッと顔を明るくたように見えた。けれどもすぐにいつもの少し困っているようにも見える穏やかな表情に戻り


「…いいんですか?」


遠慮した様子でそう言った。


「はい。実は私も…出掛けたいけど、1人で行くのもな…と、思っていたところなんです。時間がおありならば、杏寿郎様が好きそうなサツマイモを使った期間限定の商品を出している甘味屋があるので、そこに一緒に行きませんか?そのサツマイモの商品、持ち帰りも出来ると聞いておりますので、千寿郎様にご一緒していただけると…私もとても助かります」


ここに住まわせてもらうようになってから4ヶ月ほど経つが、柏木家に住んでいた頃も、1人で何処かに買い物に出る経験は殆どなかった。更には2ヶ月ほど前、街に1人で買い物に出た際、厄介な人に絡まれてしまい困っていたところを知らない殿方に助けて貰ったことがあった。それ以降、必要最低限の買い物にしか出ないようにしていた。

だから持ち帰りが可能とわかりながらも、例の甘味屋に1人で行くことができていなかったのだ。


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