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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


そんな私に向け不死川様が


「……いなくなることがわかってる俺よりかァ、あいつの方が、良いんじゃねぇかァ」


ボソリとそんなことを言った。

その言葉に、固まってしまっていた私の思考も身体も急激に活動を再開し


「…っまだわかりませんか!?私はね、不死川様じゃないと嫌なんです!他の人なんて考えられません!…不死川様が私をもらってくれないのであれば…私だって、残りの人生、不死川様を思い続けながらひとりで生きていきます!不死川様と一緒じゃない…そんな未来なんて私はいりません!!!」


そう言いながら、すぐ隣にいる不死川様の身体にぎゅっと、縋りつくように抱きついた。


身体の触れ合っている部分から、余すことなく、私の気持ちが全て伝わればいい。けれども別の人間として生を持っている限り、それが叶うことは永遠にない。それでも、伝わって欲しいと、そう思った。


「…わかった。もう…んなこと言わねェから…泣くんじゃねェよ…」


「…泣いて…ません…」


そう言い返すも、私の声は明らかに鼻声で、ぎゅっと不死川様の服に押し付けるようにして寄せた部分には、私の涙がしみ込んでしまっているに違いない。

不死川様は、そんな私の頭を、前回とは違いぎゅっと優しく包み込むように抱きしめてくれた。

大好きな不死川様の香りが鼻腔をくすぐり、私の高ぶってしまった感情が段々と落ち着きを取り戻していく。

そうしてしばらく不死川様の温もりと、香りを堪能した私はパッとそこから顔を離し、


「…私、きちんと飯田さんと話をしてきます」


不死川様の目をじっと見据えながらそう言った。けれども


「もうとっくに居ねえよ」

「へ?」


そう言われてしまい、振り返ると確かにそこに飯田さんの姿はもうなかった。


…何故?


そう思いながら首を傾げていると


「あんだけでけェ声で叫びゃあな。嫌でも聞こえただろうよ」


不死川様は苦笑いを浮かべ、そう言った。


「…確かに……そうですよね」


もし本当に、飯田さんが私に好意を抱いてくれていたのなら…きちんと、お断りしたかったのに。


それが、こんな私に好意を向けてくれた飯田さんに対する誠意だと思った。



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