第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
「…なんの連絡もないから、私のこと、迎えに来てくれないのかと思いました」
私が不貞腐れたふりをしながらそう言うと
「なんだァ?俺が嘘を吐いたとでも思ってたかァ?」
不死川様は少しムッとした表情でそう言った。
「…そういうわけじゃありませんけど…でも!不死川様、相手のことを思って吐く嘘なら、平気で自分を悪者にして吐くでしょう?その事をこの”不死川様命”の私が知らないとお思いですか?」
そうおどけたように言う私に
「…っとに…うるせェ奴だ」
不死川様は頭をボリボリとかきながら明後日の方向を向いた。そしてその後、何かに気が付いたかのように目をほんの少し見開くと
「…お前、あいつと話してたんだろ?こっち来ちまってよかったのかァ?」
私の向こう側、先程まで私がいた方向を指さしながらそう尋ねてきた。
「え?」
何のことかと思い、私が不死川様が指差した方に顔を向けると
「あ…忘れてた」
そこには苦笑いを浮かべ、こちらを見ている飯田さんの姿があった。
「…あいつ、誰だァ?」
「あの人ですが?飯田さんって方です!今日、療養を終えて故郷に帰るらしいです」
「…そいつと、何話てたんだァ?」
「特に特別な話はしてないですよ?療養中にお世話になったお礼と…あ、あと今日故郷に帰るって、そんな話をされてました」
何の気なしに私がそう言うも
「…お前なァ。わざわざそれ言うだけのために、こんな洗濯もん干すだけの場所に来ると思うかァ?」
不死川様は、まるで残念な物でも目にしたかのような顔で私を見るる。
「…違うん…ですか?」
「…あいつ、お前に気があるんじゃねェの?」
「…へ?」
飯田さんが?私のことを?好き?
そんなことを1度たりとも考えたことがなかった私は、ピシリと身体が石化してしまったかのように、思考も、身体も動きが止まってしまう。