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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


それから動けるようになった不死川様は、


後始末が済んだら迎えに来る


と言い残し、あっという間に蝶屋敷を出て行ってしまった。浮かれ切っていた私は、”はい!楽しみに待っています!”と返事をしただけで、それがいつ頃になるのか、どれくらい掛かるのか、なに一つ聞くのを忘れてしまった。

















4日経っても、5日経ってもなんの便りもなく、段々とあの日のあの出来事は、私が不死川様を求めるあまりに見てしまった幻だったのではないかとすら思い始めていた。

無心で洗った洗濯物を物干し竿に干し、気持ちのいい風と、嫌みなくらいに綺麗な青空を見ていると、


はぁぁぁぁぁぁ


自分でも驚く程に深いため息が口から漏れ出ていた。


…あれから…なんの連絡も来ない。いくら後始末で忙しくっても…文の一つくらい出す時間はあるんじゃないの…?


そんなことを考えていると”きっと迎えに来てくれるはず”、という気持ちよりも”気が変わってしまったか、もしくはあの出来事自体幻だったのかも”、なんて後ろ向きな考えで頭の中が埋め尽くされていった。





「柏木さん」


はためくシーツを見ながらぼんやりとそんなことを考えている私の名を呼んだのは


「飯田さん!」


無事療養を終え、今日ここを出ていくと言っていた飯田さんだった。


「随分大きなため息が聞こえてきたけど、何かあった?」


飯田さんはそう言いながら、私が突っ立っている場所に近づいてくる。


「…ちょっと考え事をしていまして」


曖昧に返事をする私の隣で飯田さんは立ち止まり、私と同じように風にはためくシーツの方を見ている。


何か私に用事でもあるのかな?


飯田さんは何も言い出す様子はなく、ただ私の隣に立っている。その沈黙に、なんとも言えない居心地の悪さを感じた私は


「…っところで!療養終了おめでとうございます!これから出発ですか?」


右手に風呂敷包みを持ち、今まで毎日見ていた病衣姿ではなく、着流しに身を包んだ飯田さんに向け私はそう尋ねる。




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