第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
「…そうかァ」
そう言いながら不死川様は目線を少し下げた。
「…っ…」
先ほど自分が思っていることの全てを伝えきってしまった私は、ただ不死川様の言葉を待つことしかできない。
10秒ほど沈黙が続き、不死川様が下げていた視線を再びあげ、不死川様の視線と、私の視線が再び重なる。
「俺は、最後の柱としての務めを終えたら、邸を片付けて旅に出る。……お前も…一緒に来るかァ?」
「…っ!」
不死川様の言葉は、全てきちんと私の耳に届いているのに、何を言われているのかすぐには理解ができなかった。
…今…不死川様…私に…一緒に来るかって…そう聞いたの?え?一緒に…?…いいの…?
何度も何度も瞬きを繰り返し、懸命に不死川様に言われた言葉を自分の中に落とし込もうと試みる。
何も答えようとしない私に不死川様が
「…んだよ。来んのかァ?来ねぇのかァ?」
眉間に皺を寄せ、不機嫌そうにそう聞いて来る。
「…っ…行きます!不死川様と一緒に!何処へでも!どこまでも!いつまでも!」
ようやく自分の気持ちを受け止めてもらえたことを理解した私は、半泣きになりながら不死川様にギューっと強く抱きつき、
「…っ好きです!大好き!世界で一番!誰よりも何よりも!」
溢れて止まらない自分の気持ちを、余す事なく不死川様に伝えた。そんな私の背中に、まだ遠慮がちではあるが、不死川様がその腕を回し
「…とんだ変わり者がァ…」
そう言った。
「…そんなこと…ありません!」
抱き返してもらえたことが嬉しくて嬉しくて堪らない私は、更に抱きつく力を強めた。すると
「…忘れてるようだがなァ、そこ…まだ痛ェんだよ」
不死川様がとても言いづらそうにボソリと言った。その言葉に、ようやく自分が病み上がりである不死川様の身体をぎゅうぎゅうと締め付けていたことに気が付き
「…っやだ!私ったら…すみません!…嬉しくてつい…」
大慌てで不死川様から腕を離す。
「別にこれ位どうってこと「すみません!もう絶対こんなことしません!気をつけます!だから捨てないでください!あ、まだ拾いかけの状況ですよね!…拾うのをやめないでください!お願いします!」……話し聞けやァ」
呆れた様子の不死川様の声に、私は更に慌てふためくのだった。