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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


…もしかして、私があんまりにも断るから…怒らせちゃったかな?


そんな不安が頭をよぎり、忙しなく動いてしまっていた身体の動きを止め、不死川様の顔を窺い見た。


「……え…?」


その時私の目に映ったのは、よく見慣れた、目を吊り上げ怒っている顔ではなく、私が初めて目にする、少し困ったような、それでいて愛おしいものを見るような、そんな視線のように見えた。

動きを止めた私の頬に、チョンチョンと消毒液を含ませた柔らかい布が当てられ、


「…っ痛…」


ピリッとした痛みが頬に走る。


「これくれぇ我慢しろォ」


不死川様のその言い方はやはり酷く優しいもので


「…はい…」


胸がじわりと暖かくなり、甘く締め付けられるようだった。


…やっぱり…まつ毛長い…


そう思いながら私の頬を真剣な表情で見ている不死川様を無遠慮に見ていると


「…あんまりじっと見んじゃねェよ」


不死川様がそう言った。


「…すみません、つい」


口ではそう言いながら、私の視線は不死川様の目に釘付けになってしまっており、中々そこから視線を外すことができない。

そうしている間に、不死川様は消毒を無事終えたようで、横にある使用済み籠に、私の頬に使ってくれた布をポイッと投げ入れた。

次に不死川様は、冷却シートを手に取った。


それも、貼ってもらえるのかな…?


手を煩わせてしまうことに対する申し訳ないと思う気持ちもあったが、もうすっかり嬉しさの方がそれを上回ってしまった私は、不死川様の優しさに甘え、それを貼ってもらえるのを今か今かと待っていた。


「…さっきの…お前の口癖かァ?」


パリッと冷却シートを剥がしながら、不死川様にそう尋ねられ


「…さっきのって…どの話です?」


思い当たるものが浮かばない私は、そう質問を返す。


「…あれだァ……"大丈夫"って…やつだ」

「…っん…冷たい…!」


そう言いながら不死川様は、私の少し腫れてしまっている頬に冷却シートを貼り付けた。

初めはその冷たさに驚いたものの、腫れてしまった頬をヒンヤリと冷やしてくれるその気持ち良さに、


…ふぅ


と、質問に答えるのも忘れ、呑気に息を吐いてしまう。





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