第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
腕を引かれるままにたどり着いた場所は、今はもう主人を失い、臨時で来てくれているお医者様も帰ってしまった、誰もいない診察用の部屋だった。
「おら。ここに座れェ」
そう言って座るように言われたのは、部屋にあるベッドの上だった。
「…え?まさか…?不死川様ったら…いくらなんでも大胆すぎます」
ポッと頬を赤く染め、不死川様から視線を外しながらそう言う私に
「違えわァ!馬鹿かお前ェはァ!」
顔を真っ赤に染めながらそう言った。
「ふふっ冗談ですよ!流石の私だってそれくらいわかります」
クスクスと笑う私に
「ックソがぁ…!」
不死川様はそんな風に言ったものの、その言葉の内容に反して、その言い方は優しさを含んでいるように感じ
「…好きだなぁ…」
気がつくと、そんな言葉が口を吐いて出て来てしまっていた。
不死川様は私のその言葉に動きを止め、5秒間ほど中途半端な格好のまま動かなくなった。
不死川様…どうかしたのかな?
不死川様が目を覚ましてから毎日のように、鬱陶しがられようと、呆れられようと、何度も何度も"好きです""側にいさせてください"と言って来た(ほとんど聞き流されて、へぇ、だとかほぉ、だとかそんな返事しかもらえていなかったが)。だから今更、私が不死川様に自分の気持ちをどれだけ伝えようと、驚かれるようなことはない。
そのはずなのに。
再び動き出した不死川様は、目的のものを見つけ出したようで、クルリと私の方に向き直り、徐にこちらに近づいて来る。その手には、消毒液と、私も応急処置で何度も使用したことがある冷却シートが持たれていた。ベッドに座っている私の元に近づいて来た不死川様は、一旦その両方を机の上に置き
「見せろ」
そう私に言った。
「…見せろって…ほっぺですか?」
「他にどこがあんだよ」
「…不死川様が…見てくれるんですか?」
「だから見せろっつったんだろうがァ」
「…っそんな!嬉しいですけど、不死川様の手を煩わせるようなことでもないし、自分でできま「いいから黙って見せろ」」
「…っ!」
そう言って不死川様は、首と手を左右に振りながら慌てふためく私の言葉を遮った。