第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
実際、先ほどの出来事で胸がいっぱいで、どうにも草餅に手が出ない。けれども蜜璃ちゃんが幸せそうにおしるこを食べている姿を見ていると、なんだか元気を分けてもらっているような気がした。
「それでねすずねちゃん!単刀直入に聞いちゃうけど、すずねちゃんは煉獄さんと冨岡さんのどっちが好きなの?」
「……」
蜜璃ちゃんにそう聞かれるも
「…わかんない」
私にはそう答えることしかできない。
「だって私…師範のことも、冨岡さんのことも、そういう対象として見たこと…ないんだもん」
むしろ、誰一人として”恋愛対象”として見てきたことが1度もない。
「…師範は師範だし…冨岡さんは…ちょっと変かもしれないけど、弟みたいに思ってたの。…あんな風に私のことを思ってくれていたなんて…思ってもみなくて…」
柏木
師範と
柏木
冨岡さんの
いつもと違う声色。
いつもと違う目線。
いつもと違う距離感。
先ほどの出来事を思い出すと、胸が苦しくなり、同時にきゅうぅぅと締め付けられるような初めての感覚に陥る。
「私、強くなって、私みたいに家族を奪われる人を一人でも減らしたいって…そればっかり考えてきたから…。誰かを…そんな風に見る余裕も…自分がそんな風に見られるって想像する余裕も…全然なかった…の…」
草餅にかかっているきな粉を楊子でちょいちょいしながらぼそぼそとしゃべる。
「そうなのね…私は…すずねちゃんとは全然違う理由で鬼殺隊に入ったから…その気持ちはわかってあげられないんだけど…」
そう申し訳なさ気に言う蜜璃ちゃんに、慌てて草餅から顔を上げ、その可愛らしい顔に視線を向ける。
「違うよ!私は要領が悪くて、一つのことしか出来ないからそうなってるだけ!蜜璃ちゃんの添い遂げる殿方を探しにきたっていう目的、本当に素敵で羨ましいなって思ってるの!しかも独自の呼吸を編み出して、柱にまでなって!そんな蜜璃ちゃんの側にいると、こうして戦うことが、苦しくてつらいことばっかりじゃないってそう思えるのっ!!!」
自分の気持ちを言葉にしている間に自然と熱がこもり、気が付くと私は
ガタン
と音を立て椅子から立ち上がっていた。そんな私の姿を、蜜璃ちゃんはキョトンとした顔で見ている。