• テキストサイズ

鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】


私は長いことしがみついていた蜜璃ちゃんの腰からようやく手を離す。

"どこがいいかしら"と頬に指を当て、頭の中でこれから行くであろうお店の候補を出していると思われる蜜璃ちゃんの隣に立ちながら


いくらなんでも…挨拶くらいはしないと


そう思った私は、恥ずかしさを抑え、師範と冨岡さんに向き直り


「…任務お疲れ様でした。…今日は…これで失礼します」


と告げ、頭を下げた。


そんな私に


「明日もいつも通り稽古だ。遅れてくることがないように、きちんと身体を休めてくれ」


と、師範が言った。その口調も、表情も、すっかりいつも通りの師範に戻っていて、私はホッと一息つく。その後、師範に


「はい。…また明日」


「うむ!楽しんで来るといい!」


「…ありがとうございます」


お礼を述べ、会釈をした。次に、冨岡さんの方へと身体の向きを変え


「失礼します」


と一言告げ、師範にしたのと同じように会釈をする。


「…またな」


冨岡さんから返ってきた返事は、たったのその一言ではあったが、言葉数の少ない冨岡さんらしいその一言に、


やっぱりこの、言葉数が少ない冨岡さんの方が落ち着く


そんな事を考えてしまうのだった。







——————————————







「んーん!このおしるこ、餡子の甘さが絶妙でやっぱり美味しいわ!…っすみません!おしるこ5杯追加お願いします!」


元気に右手をピント上げ、追加の注文をする蜜璃ちゃんに


「はいよ!いつもありがとうねぇ」


"こんなに可愛い子がそんなに食べるの?"


なんて本来であれば思われてしまいそうだが、蜜璃ちゃんはこのお店の常連さんのようで、甘味屋のおばちゃんはニコニコと蜜璃ちゃんの素晴らしい食べっぷりを見ていた。

その一方で私は、大好きな草餅を頼んだというのに、なかなか手をつけられずにいた。

そんな私の様子に気がついた蜜璃ちゃんは


「…っやだ!私ったら食べるのにすっかり夢中になってたわ!ここには話をするために来たのよね!」


と慌てた様子で手に持っていたお椀をテーブルに置く。


「…っいいの!気にせずいっぱい食べて!私、蜜璃ちゃんが美味しそうに食べている姿を見るの、とっても好きなの!」

/ 898ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp