第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
「…煉獄…」
師範の背中からひょいと顔を出し、冨岡さんの様子を伺おうとしたものの、視界に入ってきたのは冨岡さんの顔ではなく、なにやらほんのりと頬を染めながら冨岡さん、師範、そして私の顔を順番に見遣っていく炭治郎くんの顔だった。
頭上では、お互いをじっと睨み合っている師範と冨岡さん。冨岡さんの隣で、困惑した表情を浮かべ、忙しなくみんなの顔をみている炭治郎君。そして、なぜこんな状況になっているのか全くわからない私。
…何?…3人とも…どうしたの?
「…師範…?どうかしたんですか?…冨岡さんも…2人とも、どうしてそんな顔で睨み合っているんですか…?何か…あったんですか…?」
不穏な空気に、目の前にある師範の炎柱である証の羽織を軽く引っ張ると、師範がグリンと私の方に顔を向け
「なんでもな…くはないな。俺も冨岡も、柏木に対して同じ気持ちを抱いているようだ」
と、じっと私の目を見ながら言った。
「…同じ…気持ちって…なんです…?」
私がそう言いながら師範の顔を見上げると、
「聞きたいか?」
今度は冨岡さんも私をじっと見ながらそう言った。
何?何なの?何で師範も冨岡さんも私のことをそんな顔で見るの?私には…わかんないよ…。
どうして良いかわからず、助けを求めるように炭治郎くんの顔を見る。炭治郎くんは口をつぐみ、何も言ってはくれないが、私をじーっと見つめ次に師範の顔、そして冨岡さんの顔、最後に再び私の顔に戻り、"うんうん"と激しく首を上下させ頷いている。
…それじゃあ…全然わかんないよぉ!
残念ながらその炭治郎くんからの行動から、何も読み取ることが出来ず、私は師範の背中からスッと抜け出すと、師範と冨岡さんの間に割って入った。
「どうしたんですか?2人とも?…2人とも、いつもの2人らしくありません!お腹が空いて気が立っているんですか?だったら…だったらこれからみんなで一緒にご飯を食べにいきましょう!ね!そうしましょう?」
この微妙な空気をどうにかしたいと思い、私がなんとか捻りだしたこの提案だが、
「俺は別に腹が空いてるわけではない」
「俺は別に腹が空いてるわけじゃない」
と2人同時に見事に否定されてしまう。