第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
滞りなく任務を終え、街中を師範の後ろについて歩いていた時
「煉獄さん!柏木さん!」
背後から名前を呼ばれ、私と師範は同時に後ろを振り返った。
そこにいたのは
「炭治郎君!」
そして
「冨岡さん!」
水の呼吸、師弟関係の2人だ。
冨岡さんはともかく、久々に会うことが出来た炭治郎君に、師範が一緒にいるということも忘れ、そちらへと小走りで向かう。
「炭治郎君久しぶり!元気だった?」
「はい!何とかやっています!柏木さんも元気そうでよかったです!」
そう言って穏やかな笑みを浮かべている炭治郎君に
この子はどうしてこんなにもかわいくて素直なんだろう
とそんなことを考えていた。そして、その隣にいる冨岡さんに
「冨岡さんも、先日ぶりです!」
そう私が明るく声も掛けるも
「そうだな」
冨岡さんからの返事はその一言のみ。けれども、そんな様子にもすっかり慣れてしまった私は、別に冨岡さんの反応が薄かろうとなんとも思わなかった。
生憎だか今日は、
「冨岡さんすみません…。今日は師範と一緒の任務だったので、おにぎりはもう食べちゃってないんです…」
「いや。構わない」
言葉の通り、握ってきたおにぎりは、任務が完了してすぐに
"腹が減ったな!柏木の握ったおにぎりが食べたい"
と言った師範と一緒に食べてしまった後だった。
もぐもぐと無表情でおにぎりを咀嚼するかわいい冨岡さんの姿が見れないのは残念だな…
そう思いながら、冨岡さんをじっと見ていると、
「柏木の顔が見られればそれで良い」
と、冨岡さんが抑揚のない声で言った。
その言葉を
ん?…それって…どういう意味だろう?
どう解釈したら良いか分からず、ゆっくりと私の首が右方向へと傾いて行く。
そんな時、
「冨岡!」
向き合っている私と冨岡さんの間に割って入るように、師範がスッと目の前に現れ
「最近なにやら柏木が世話になっているようだな!」
と、なぜか私をその背に隠すようにしながら言う。その師範の声は、いつも以上に大きく、心なしか怒っているようなそんな口調で、私の首はさらに右へと傾いた。