第1章 愛しの及川さん
17.腕の中にいさせて欲しいの
達した徹は、ぐったりと私の上に覆いかぶさった。
「また、いっぱい出したね」
「うん。赤ちゃん…デキたらごめん」
「いいよ。徹の赤ちゃんだもん」
徹の背中に手を回す。
徹の子供なら、男の子でも女の子でもきっと可愛いと思う。
私は徹との子供なら欲しいよ。
例え徹にその気がなくても、私の家庭は幸せで溢れる筈だから。
徹は疲れ果ててしまったようで、私を抱いたまま眠りについた。
無防備な寝顔が愛おしい。
私は勝っても、負けても、どっちでも良かった。
欲を言えば勝って欲しかったけど。
貴方に惹かれたのは、貼ってつけた笑顔の下の苦悩。
私はまだ幼く、こんな形でしか慰め方を知らない。
徹は今、どんな夢みてる?
バレーの夢みてる?
悲しい夢みてない?
せめて眠っている時くらい、安らかでいて欲しいの。
今だけは貴方の腕の中にいさせて欲しいの。