第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
真夏の体育館はクソ暑いうえにむさ苦しい男で溢れかえってて視覚的にも暑い。
『鉄朗、私ドリンク作ってくるから少し離れるね』
はい、オアシス。可愛い。好き。
「1人で平気?」
『手伝ってもらっちゃったら私のいる意味ないもん。平気だよ!』
カゴにスクイズをいれてパタパタと体育館を出ていく彼女。暫くして戻ってきたの隣には赤葦がいた。…は、なんで?
『ありがとう赤葦くん。助かったぁ』
「いえいえお気になさらず。こんな重いもの1人で持たせられないですから。」
「おかえり」
『ただいま。遅くなってごめんね!』
赤葦の手からカゴを受け取って2人の間に割って入った。
「うちのマネージャーなんで気にかけてくれなくて大丈夫ですよ。も…平気かって聞いたよな俺。」
「たまたま通りかかったら彼女が1人で運んでたので。重そうでしたしさすがにスルーできなかっただけですよ。」
『ご、ごめんね鉄朗!他校の選手に迷惑かけたらいけないよね…次はちゃんと1人で頑張るから…。』
俯いた彼女が俺の手からカゴを奪ってよろよろと音駒のベンチへと運んでいってしまった。別に怒りたいわけじゃねえのに…言い方間違えたな。
「さんって黒尾さんの彼女さんじゃないんですよね?」
「あ?」
「彼女じゃないですよね?」
「だったらなに」
「いえ、恋人のような過保護感?だなあ、と。」
彼氏面すんなってことか?なんでお前にそんなこと言われなきゃならねえの?やっぱに惚れたか?
「喧嘩売ってます?買いませんよ」
「別に売ってませんよ。」
まーじで何考えてんのか分かんないんですけど。
「あかーしー!!こっち始まるぞー!!」
「今行きます」
何事も無かったかのように俺に背を向けて梟谷コートへと帰っていく赤葦。木兎の声がかからなかったら今頃どんな会話をしていたのだろう。考えるだけ無駄か。