第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side赤葦
『あ、そうだ赤葦くん』
「はい」
『これこの前のお礼。助けてくれたのとジャージ貸してくれたのと飲み物とかいろいろ…ありがとうね。』
そう言って差し出された手には紙袋が。
「そんな…気にしなくてよかったのに。なんだかすみません…。」
『ううん。ほんとに助かったから貰って欲しいの』
「すみません、ありがとうございます。」
受け取って中身を確認すると運動部には必需品のマフラータオル。それとボディシート。
「わ…すごい。助かります。ボディシートとか意外と値段するから買うの迷ってたんですよね。」
『ほんとに?私ベタベタするの苦手だから夏場は必須で…良かったら使ってね。』
「タオルもありがとうございます。使います。」
『いえいえです!』
あんなことでこんなお礼を頂いていいのだろうかと、逆に申し訳なくなってしまうけど女の人からこうやって物を貰うのは初めてでなんだかくすぐったい。
ちらりと黒尾さんに目を向けると死んだような目でこちらを見ていた。木兎さんが1人で喋ってるみたいになってるな。孤爪もフルシカトしてるし。
「あーー!赤葦なにもらったの!!」
「タオルとボディシートです。」
「いーな!なんで!?俺には!?」
『木兎くんには…あ!飴ならあるよ!』
「まじ!欲しい!!」
『はいどーぞっ』
「さんきゅー!あとで食う!」
黒尾さんに話しかけていたかと思えばくるりと振り返って俺の手にある紙袋を見つけた木兎さん。ぴょんぴょん跳ねて羨ましがる様子はまるで園児。
「騒がしくてすみません。」
『ううん賑やかで好きだよ』
ふわりと微笑んだ彼女にトス、と胸を撃ち抜かれたような感覚になる。なに…これ。
「おい、の顔みてぼーっとしてんなよ。この子はウチのマネージャーですからね?あげませんよ?」
『ちょっと鉄朗っ!そんなこと言わなくていーいっ!』
黙って見ているだけかと思っていた黒尾さんはしびれを切らしたのか俺と彼女の間に割って立った。
「だって赤葦が乙女の顔してお前のこと見てっからさあ」
「そんな顔してませんよ」
…してたのか?今の感覚はなんだろうか。
「いーやしてたね!はやらん!」
『鉄朗っ』
「はあい」