第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
コイツがケーキを食べ終わるまであと二口。俺への説教が始まるまであとケーキ二口分。
『ふぁあ美味しかった!』
「良かったな」
『うん!カズくんありがとうっ』
「どーしたしまして。
んで話ってなに」
『…あ、うん。えっと。』
言いづらいのか分かりやすく目をそらす。しばらく泳がせていた視線を俺に戻してまっすぐと見つめられる。
『カズくん』
小さな手が俺の頬を包む。
「…なに?」
説教じゃない?のか?
『痛かったよね…ほっぺた。』
「女に叩かれるくらい別に…」
『私は痛かったよ。
カズくんがあんな言われて痛かった。』
そう言ってまたぽろぽろと涙を流す。
「おいおい泣いてもケーキやらねえぞ」
『…っカズくんやだよ…っ』
「なにがだよ…」
俺の隣に座っていた彼女がグッと距離を詰めてきたかと思えば思い切り抱きしめられた。
「?」
『…っうぅ、もうあんな風に言われるカズくん見たくない。カズくんいいとこたくさんあるのに…あんな言われるのやだよぉ…ひぐっ』
俺のワイシャツをの涙が濡らして肩がじんわりと温かくなっていくのを感じる。
「おいおい泣くなって…」
『私が…っ私がカズくんの相手になればあんなこと言われなくてすむよね…?だからいいよカズくん。私を抱いて…。』
耳元で泣きながら震えた声がそう言った。
確かに私を抱いてと言ったんだ。
「は…え?何言ってんのお前…。
散々嫌だって言って… 『もういいの。』」
「いやでもよ…」
抱きたくないわけじゃない。むしろ抱きたい。相手をしてくれと頼んでいたのは俺の方だから。だけどそっちから言われたらなんか違うだろ。俺たちって幼馴染なわけだし…。
『やだ…?カズくんは私じゃ勃たなない…?』
「いやマジで何言ってんの…勃、つけどさ。
の口からそんなん出てくると思わなくてクソ驚いてるだけ。」
『…っ私が相手するから…だからもう』
「分かった。しか抱かねぇよ。
そしたらお前もう泣かない?」
『うん…泣かないよ。』
「んじゃさっそく…」
『え、ちょっと待ってまだ心の準備が!』
「準備もクソもねぇだろ。
優しくしてやるからこっちおいで」