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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)


優しくて強いか…。
族やってた時のこと言ってんのか。

『ねぇカズくん』

「んー」

『ケーキ買ったらカズくんの家行ってもいい?』

「いいけどなんかあんの」

『話したいこと…ある。』

「分かった」

『ありがと。』

どーせ説教だろ。
女の子泣かせんなーって。
カズくんだけが悪いわけじゃないけどって泣きながら説教されるんだろうな。まあいいか。

カフェはやめてケーキ屋に来た。

「何食うの」

『チョコケーキがいいけど
こっちのベリータルトも気になる』

「りょーかい。すいませーん。このチョコケーキとベリータルト1つずつください。」

『えっ?』

「2個食えばいいだろ」

『ありがとうっ』

さっきまでぽろぽろ涙をこぼしていたのが嘘みたいにご機嫌な。ケーキの1つや2つで元気になるなら安いってもんだ。

2人並んで俺の家に帰ってくる。

『紅茶いれてくるからカズくん先に部屋行ってて〜』

「おー」

ガキの頃から互いの家を行き来してた俺たちにとって、まるで自分の家みたいにお茶をいれたりするのは日常茶飯事だ。むしろ気を遣われる方が心地悪い。

どかっとベッドに腰を下ろしてしばらく待っていると声が聞こえてきた。

『カズくんドアあけてーっ』

「んー」

ドアを開いてやるとトレーにティーカップとポットをのせて立っていた。俺でもどこに置いてあるか知らない食器だ。

「俺ん家こんなコップあったの」

『嘘でしょ?ずっと前からあるよ』

「ふーん、初めて見た」

『ねえ早く食べたいっ』

「はいはいどーぞ食ってください」

箱を開けるなり、まずはチョコケーキをパクリと頬張る彼女。そしてベリータルト。交互に食べてはニコニコと満足そうにしている。

「うまい?」

『うん、すっごい美味しい!
カズくんも食べてみてよっ』

そう言って口元に差し出されたケーキ。
彼女の手から貰ったケーキが口の中に広がる。たしかに美味いけど俺はひと口でいいかな。コイツに買ったやつだし。

「ん、さんきゅ。うめーな」

『でしょ!次はどっち食べたい?』

多分こいつは半分ずつのつもりなんだろ。

「いや俺はいいや。全部食っちゃって。
お前に買ったやつだしな」

『美味しいのに!いいの?』

「食ったら話きくわ」

『あ…うん!』
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