第7章 夏の思い出
「そこにサンダルので履いて出てこれますよ?」
治「ホンマ?じゃあちょっとだけ荷物運びサボってまお〜」
イヒヒと笑いながらサンダルをつっかけ、治君が隣にやって来た。
柵に肘を掛け2人で景色を眺める。
治「ホンマ良えトコやな〜。最高のロケーションや。それに隣にはともみちゃんもおるし、癒し効果倍増やな。」
治君の人懐っこい笑顔が私に向けられる。
「私に癒し効果はないですけど…。」
治「いやいや、あるって!隣におると落ち着くもん。
あー、、でも今はちょっとドキドキしとるかも。」
「・・・え?」
その時、私達の間をヒュッと風が吹き抜けた。
下ろしていた髪が乱れて顔にかかると、それを治君が手を伸ばしそっと耳に掛けてくれた。
治「ほんまに可愛い…」
「・・・・」
いきなり甘い言葉をかけられて、どう返事をしたら良いか戸惑っていると、治君は自分の目元を指差した。
治「ここ、ともみちゃん泣きぼくろあるやん?メガネん時は隠れてたけど、、コレ色っぽいな?」
「・・ホクロが?」
治君は目を細めて頷く。
私のホクロなんかより、よっぽど治君の方が色っぽいと思う。
治「思った通りや。やっぱりともみちゃんが保健室の子やったわ。・・・なんかこんなにドキドキすんの久しぶりやわ。」
「・・治君は私といてドキドキするんですか?」
治「せやで?ここ手当ててみ。」
治君は私の手を取ると、自分の胸に当てた。
程よく厚い胸にはしっかりと筋肉が付いていて、手の平からは治君の早い鼓動が感じられた。
「早い…。」
治「ふっふっふっ、せやろ?一緒におるだけなのに緊張するって中学生みたいやな!」
治君の笑った顔は少し幼くて、つい可愛いと思ってしまう。
私にも母性というものがあるのか分からないが、母性本能を擽られるとはこういう気持ちなのかもしれない。
侑「コラァ!サムー‼︎どこ行ったぁー⁈」
家の中から侑君の大きな声が聞こえて来た。
どうやら治君を探しているようだ。
私達は顔を見合わせ、
治「はぁ、、しゃあない。うるさい奴に見つかる前に戻るわ。」
「私も戻ります。」
治君の後に続いて私も部屋へ戻った。