第32章 侑end
それからしばらくして侑君と夏希さんが店にやって来た。
夏希さんは入って来てからずっと俯いていて表情を伺う事は出来ない。
ピリピリと空気が張り詰める中、侑君と目が合うと、
"大丈夫だ"と言わんばかりに口の端を上げ小さく頷いた。
ーーー不思議と心が落ち着き、私も小さく頷き口元を緩めた。
治君と夕子ちゃんが外へ出て行き、店の中には私達3人だけが取り残された。
侑「立ち話もなんやし、こっち座ろか?」
テーブル席に侑君と夏希さんが並んで座り、私はその向かいに腰を下ろした。
重苦しい空気の中、気まずさに俯いていると、最初に口を開いたのは侑君だった。
侑「怪我、大丈夫か?」
「あ、うん…大丈夫。」
顔を上げ、ぎこちなく笑って見せると夏希さんと目が合った。
夏希「・・昨日は、手をあげたりしてごめんなさい…」
夏希さんは小さく弱々しい声で呟くと、目を伏せた。
「もう、大丈夫なので気にしないで下さい…」
佐久早選手の手当もあり、頬はすでに腫れは無くなり、痣にもならなかった。
背中は、、、正直痛みは残ってるけど、夏希さんの心の痛みに比べたら全然大した事、ない。
夏希さんの目元は腫れていて、あの後もずっと泣いていたのかもしれない…。