第32章 侑end
立ち上がり、へらっと笑う私を、佐久早選手がそっと抱きしめた。
突然、清潔感のある匂いに包まれ、驚き固まっていると、
佐久早「・・何なんだよ、あんた…。すげー掻き乱されるんだけど。」
絞り出すような声が頭上から聞こえた。
けど、背中の怪我を気にしてか、抱きしめる腕は酷く優しい。
「あ、あの…、、佐久早選手?」
佐久早「・・アイツの事、泣くほど好きなの?」
「・・・夏希さんの言う通り、、私はしたたかなのかもしれません…。
5年前、自分から離れたくせに、、、
今更そんな都合の良い事言えません…。」
すると佐久早選手は身体を離し、じっと私を見下ろした。
佐久早「だから我慢すんの?そうやってずっと気持ち押し殺して?お人好しも大概だな。」
「だって!・・侑君には夏希さんがいて、、夏希さんは今、侑君が必要なんだと思ったら
そんな事言えないっ!」
鼻で笑われて、つい感情的になってしまった。
「す、すいません…大きな声を出して…。」
視線を逸らすように俯くと、それを許さないとばかりに顎に長い指が掛かり、クッと上を向かされた。
佐久早「好きって事は認めるんだ?」
「・・・。」
返答に困り目を泳がせると、黒い瞳がスッと細まった。
佐久早「・・なんか腹立つ。」
「・・・え?」
何か怒らせてしまった?と思った瞬間、
佐久早選手の顔が一気に近づき唇を奪われた。